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「無形」を「ブランド」に。WEBディレクターの見えないモノづくり

Posted by SHO

昨今、AIは驚異的なスピードで進化し、あらゆる業務の土台を担うようになりました。制作現場においても、土台をAIに作らせることは日常の風景です。いずれは全ての工程が自動化されるのではないか?と、SF的な未来を楽観したくなる一方、業務量が減っていないことに気づきました。

ディレクターという業務は「属人性」や「調整力」が発生するため、AIに代替しづらい領域。それでも、AIに任せられるタスクは確実に増えています。しかし、業務の絶対量が捌けるようになった感覚は薄く、AIが生成した資料とにらめっこするような、時間を消費する場面が変わったように感じます。

この時間の使い方の中にディレクターの役割を再定義するヒントがあり、AI事変を経て、私なりにアップスケールした「無形のブランド」について綴ろうと思います。 Blog_260515_001.png

「形」のない業務

私事ですが、今年からプロデューサーとしての役割も担うことになりました。ディレクターとして「いかに作るか(How)」を追求する一方で、プロデューサーとして「なぜ作るか(Why)」「どう価値を生むか(Value)」という上流の視点も求められ、マインドを反復横跳びする日々を過ごしています。

どちらの役割においても共通して言えるのは、デザイナーのように「デザイン」を作るわけでも、エンジニアのように「コード」を書くわけでもありません。「作品」を残す業務ではないのです。形のない業務において、いかにして価値を証明し、プロジェクトに貢献すべきか、とても難しいお題目です。

「空気」のブランディング

WEB制作におけるブランディングは、ロゴやビジュアルといった視覚的な成果物を想像します。一方、プロデューサーやディレクターが提供すべきは「プロジェクト体験そのもの」のブランディングです。プロデューサーはクライアントのビジネスの未来を定義し、ディレクターがそこへ至る精緻な地図を描く。そのプロセスを通じてつくられるものは、いわば、「空気」です。

「この企業なら要望を叶えてくれる」というクライアントの期待。
「このプロジェクトなら最高のパフォーマンスを発揮できる」という制作チームの高揚。

このポジティブな「空気」を醸成することにフロント陣営の真髄があり、「誰がやっても同じ進行管理」ではなく、自身が介在することで熱量が一段と上がる、「バフ効果」こそが、目に見えない無形のブランドを形成します。 Blog_260515_003.png

では、具体的にどうやってその「空気」を作るのか。

プロジェクトには常に「本当に完遂できるのか?」「この仕様で正しいのか?」という不安が付きまといます。そのリスクを予見・先回りし、メンバーが迷う時間を最小化する「迷わせない設計」は、優れたUIデザインと同等の極めてクリエイティブな思考を要する作業です。

そのためには「解像度を上げる翻訳術」が必須です。

クライアントの抽象的な想いを実装可能な論理に、あるいはデザイナーが閃くためのインスピレーションへと変換する。現場の技術的なこだわりには、ビジネス的なメリットを含ませクライアントに翻訳して伝える。この「高解像度な往復」があるからこそ、個人の力が結集し、プロダクトの質が引き上げられます。 Blog_260515_002.png

「無形のブランド」へ

冒頭の問いに戻ります。

AIに業務を投げても楽にならないのは、AIが生成したものに「熱」がこもっているかを読み解き、文脈を肉付けする作業が必要だからです。その資料が要件を満たしているか、今のプロジェクトの文脈において理に適っているか、それを汲み取り、血を通わせることができるのは、まだまだ人間の領域です。

世に送り出される素晴らしいプロダクトの多くは、潤沢な時間があって生まれたわけではないと思っています。限られたリソースとスケジュールの中で、ギリギリの判断を繰り返し、産み落とされた産物ではないでしょうか。

それを左右するのは、テクニック以上に「熱量の密度」が重要です。AIによってどれだけ研ぎ澄まされた効率化ができても、最後は泥臭く調整し、責任を持って着地させる執念そのものが、クライアントやチームにとって「無形のブランド」に変わっていくと思います。

カタチがないぶん、「無形のブランド」はディレクターの数だけ正解があります。
自分だけの「空気」に今後もこだわっていきたいですね。

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