本文へジャンプ

ライブ配信の音づくりが難しい理由。音響オペレーターが直面する「音の遅延」と「変わる音質」

Posted by IMM
「MONSTER REPORT」先輩モンスターたちが、仕事・就活・カルチャーについてリアルに綴るコラム

こんにちは。初めてブログを書かせていただきます、IMMです。 

今まではコンサートや芝居、ミュージカルなど、いわゆる「リアル空間」の音を担ってきましたが、MONSTER DIVE(以下、MD)にジョインするようになってからはライブ配信の世界に触れるようになり、ライブ配信に求められる独自の音について、日々考えながら仕事に向き合っています。

今回私がお話ししたいことは、私が日々の業務で直面しているライブ配信特有の音響・音声の難しさについてです。実際に私がMDにジョインしてから大変さを感じている、ライブ配信で悪戦苦闘している部分を2点挙げたいと思います。

1.音をリアルタイムに確認することができない!

普段、皆さんが実際に視聴している配信動画は、各プラットフォームの設定や仕様により違いはありますが、実際の現場の音から数十秒遅れて配信されていることが多いです。これは配信が途中で途切れたりしないよう、安定してコンテンツをプラットフォームから皆さんに届けるためには避けられないことで、ライブ配信における宿命ですね。

音のエンジニアは、通常自身が操作しているミキサーで音を聞いて様々な判断をしていくのですが、この配信の遅れが音において何を意味するかというと、
視聴者の耳に届く「配信された音を、同じ時間軸で確認することができない」のです。

これがPAであれば、実際にスピーカから出ている音を聞いて「音がこもっているからスッキリさせよう」といった判断ができます。ですがライブ配信においては、配信された音を聞いてから調整したのではその間数十秒、調整がされる前の状態で流れることになり、より良い音にするための調整が後にずれこんでいきます。

だからこそ、配信先でどのような音が出ているのか、しっかりとイメージを持った状態で臨まなければならないのです。

2.自分の調整した音から視聴者に届くまでに、音が変化する!

演者のマイクや効果音、楽器や音楽再生など、私たちオペレーターは様々な音を調整して皆さんに音を届けています。それがPAであれば、スピーカから出ている音を会場に適した調整したうえで、直接客席のお客さんへ。レコーディングや収録などのパッケージされたものであれば、マスタリングなどといった工程を通ったうえで、自分が調整したものを購入者に直接届けることができます。

しかしライブ配信においてはそうではありません。
まず音がどのような経路を辿って配信に乗っているのかを簡単に説明します。細かい仕組みや専門用語をなるべく省いて話すため、厳密には若干違う部分があることはご容赦ください。

マイクなどを私たちがミキサーで調整した後、音は概ね以下のような経路を辿って、皆さんのもとに届けられています。

blog_260710_001.png

我々、音の技術者は通常ミキサー上で音を聞いて調整していて、調整した音を映像スイッチャーに送ることで、映像と音が組み合わさります。そこから映像とともに配信プラットフォームに送るためのエンコーダーと呼ばれる機器に入力され、エンコーダーによってプラットフォームへ情報が送られます。プラットフォーム上で各視聴者の状況に合わせたいくつかのフォーマットが作られることで、初めて皆さんのもとに配信され、映像とともに音が届けられています。

ここで大きく音に変化をもたらすものが2点あります。
一つ目はエンコーダーです。エンコーダーでは、インターネット上での通信速度が十分でない場合でも確実に安定した情報を送るために、データを「圧縮」し、データ量を少なくした状態で送り出しています。ここで音に若干の変化が発生します。通常人間の耳には聞こえないような音、他の音に紛れて実質聞こえていないような音を間引くことで、品質を保ったままデータ量を減らしているのですが、データの内容が変化している=音が変化していることに変わりはありません。

二つ目が各プラットフォームです。ここの影響が非常に大きく、かつ把握することが難しい部分です。突然の大音量を避けるために大きな音の音量を意図的に下げたり、視聴者の通信速度に合わせた品質ごとにデータが再度「圧縮」されたりと、ここでも音の変化が起こっています。さらに、これが各プラットフォームによって処理が違い、かつ処理内容が公開されていないプラットフォームも多く、まさにブラックボックス。

blog_260710_002.png

我々音の技術者は、このような視覚で捉えることができない、まさに「目に見えない相手」と闘っているのです。

これらを踏まえたうえで、良い音を目指すために行っていることの一つとして、実際に配信された音を後で聞き返し、自身のイメージとズレがないかを確認して、次の現場に活かすようにしています。このように、具体的にどんなことをしているのか?については、また機会があればお話ししたいと思います。

これだけ奥深いからこそ、MDではライブ配信の音にもこだわっています。マイクから楽器のひとつひとつまで一からすべて音をまとめあげて、配信に最適なサウンドに仕上げて送り出す。現場のPAさんから音をもらう場合でも、PAとは違う配信仕様にバランスを整えるだけで終わらせず、そこに観客の声も混ぜて臨場感を演出する。そういったひと手間もふた手間も創意工夫を心掛けるのが、MD流です。

今回はライブ配信について音の視点からお話しさせていただきましたが、我々MONSTER DIVEのテクニカルチームはこうした技術の難しさと闘いながら、より良いものづくりを目指しています。配信されたコンテンツを見ているだけではなかなか伝わりにくい、こういった皆さんの目に触れない裏方の技術に興味がある方と、共に歩いていけたらよいなと思っています。

「MONSTER REPORT」先輩モンスターたちが、仕事・就活・カルチャーについてリアルに綴るコラム
Recent Entries
MD EVENT REPORT
What's Hot?